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子ども白書に書いたこと。

「子ども白書」って知っていますか?「子ども白書」は日本子どもを守る会によって、1964年から刊行され続けています。子どもに関わる最新の話題や問題を「子どもの権利」の保障の視点に立って、総合的・多角的な切り口から分析・紹介しています。2023年度の子ども白書に「デザイン」の視点から寄稿させて頂きました。


デザインの持つ教育力や包摂力を耕して、

多様なcoの幸せが重なる場をつくる

 

コドモチョウナイカイってなあに?


 

コドモチョウナイカイとは、子どもたちが「コドモチョウナイカイ」と称するデザインチームを組んで、共に遊び学びあいながら、まちやまちの人たちを元気にする「おまつり」をつくりあげる子どもたちによるデザインプロジェクトです。「チョウナイカイ」とはいえ、特定の町内会の地域活動ではありません。新旧の住民が混在し外国籍の子どもも多い港区で、地縁だけではなくプロジェクトやテーマを共有するオープンエンドなコミュニティをつくれたら、と2014年から活動しています。公募によって集まった異年齢の子どもたちが、4回のワークショップを通して、「ひとり→ふたり→みんな」と少しずつ協働の範囲を拡げながら、チームとともにプロジェクトを育み「おまつり」を成し遂げます。2019 年のテーマは「デザインピック」。限界や境界を超えるデザインの力をテーマに、ファッションや建築、まちやコミュニケーションのデザインに取り組み、多様な個性・特性・表現を包摂する創造的な世界をつくりあげました。

また、子どもたちと様々な社会課題をデザインでつなぐプログラムを多数展開しています。『OriHimeパイロットといっしょに分身ロボットの服をデザインしよう!』では、難病や障害とともに生きるOriHimeパイロットと子どもたちが分身ロボットを通して、コミュニケーションをとり、パイロットの意図や要望を丁寧に読み解きカタチにする、対話と協働が実現しました。

絵本作家tupeta tuperaのクリエーションの力を借りて取り組んだのが、多様な性との出会いをテーマとする『みんなを知ろう!なりきりおめんワークショップ』です。子どもたちは、覆面モデルと対面し、様々な質問を通して、モデルの「顔」を想像し、「おめん」をつくりました。LGBTQ+やSOGIといった用語や当事者について、正しい知識を得ることも必要ですが、その人の「セクシャリティ」だけに注目するのではなく、「人」として出会い理解し合うことの大切さを問うプログラムでした。

 知ることから一歩踏み出して自分自身や社会の問題として考えるきっかけを作っているのが「デザイン」なのです。

 

どうして「デザイン」なのか?

デザインの持つ教育力と包摂力とは?

 

 教育の目的は、個人の持つ個性や特性を尊重しその発達をうながすこと、そして同時に、他者や社会と豊かで幸せな関係を結ぶために必要な感性や知性の基礎を築くことにあります。コドモチョウナイカイは、「デザイン」という行為に、子どもたちの感性や知性を育むのに必要な過程が含まれている、という仮説からはじまりました。

自然や物事を観察する力、様々な角度や尺度から思考する力、思考を可視化するための表現力、様々な表現や他者への想像力、多様な個性と協働する力。問題や課題を解決する創造力。モノ・コト・ヒトをつくる過程における探究的な学びは、生活や人生を豊かにしてくれることでしょう。

また、個々の人間の「生きる力」を伸ばすだけではなく、その力が生かされる場が必要です。コドモチョウナイカイは、この「生きる場」について「おまつり」からヒントを得ました。おまつりは、地域の文化や伝統を継承し、新しい歴史を創生する場であり、多様な人々との対話や協働のプラットフォームです。まちやまちの人たちを想う温かな気持ちが堆積するところ、子どもたちが地域や社会と豊かな関係を築くところ、多様な人々とともに生きる未来を描くところ。対話や協働を通して、子どもたちとともに、「みんなでいきるみんなの心が自由なせかい」を育てていきたいのです。

 



みんなでいきるみんなの心が自由なせかい

 

虐待や貧困、いじめや不登校、自殺など子どもたちを取り巻く社会課題は複雑化しています。これらの課題を個別具体的にケアする取り組みも大切ですが、なぜこのような問題が起こり繰り返されるのか、根本から考える視点も必要です。個々の生きる力を育むとともに、多様な個の幸せが共存する場を育むためには互いにケアしケアされる営みが不可欠です。教育は、教えられるものから自ら探究し、新しい経験や考えを再創造して、他者や地域社会に還元していく喜びや幸せにつながってこそ、その目的を果たしていると言えるのではないでしょうか?

写真は、港区第36回障害者週間記念事業のポスター原画コンクールに出品された小学2年生の子どものデザインです。彼女は最初、車椅子に座った女の子の周りにたくさんの友達が集う様子を描こうとしました。1学年上に車椅子の女の子がいて、同級生たちがお世話する姿が素敵で羨ましかったそうです。「障がいのある人には優しくしてあげないと」という彼女に問いを投げかけました。「あなたにも障がいのある友達がいるけれど、優しくしないといけない、遊んであげている、と思っているの?」「うーん。一緒にいると楽しいし、(私に)優しくしてくれるから、大好きなの。」そんなやりとりの後、画用紙に向かった彼女は、思いつく限り多様な人々を描き始めました。車椅子の人、医師や看護師、盲導犬を連れた人、義足の人、妊婦や赤ちゃん、高齢者や小学生。いろんな立場の人々が、様々な状況や感情を抱えながら生きている様子が描かれています。不安、悲しみ、怒りなど負の感情をも包み込むような淡いピンクのグラデーションの背景。白く抜き取られたハートの中には、くっきりと黒いクレヨンの文字「みんなでいきるみんなの心が自由なせかい」。

 ポスターのデザインを通して彼女が得た学びには驚かされます。障がいといっても個別具体的で多様な障がいがあること。身体だけではなく心が不自由で生きづらさを抱える人もいる、ということ。自由・不自由、幸・不幸とは可分ではないこと。みんなの幸せが共存する世界とはいったいどんな世界なのか、を問いかけてくるのです。

私たちも、コドモチョウナイカイの活動を通して、多様な個の成長や自己実現をめぐる小さな物語を大切にしながら、個の幸せが重なる豊かな色彩のある場所を実現するためのco、対話(conversation)、コミュニケーション(communication)、協働(collaboration)、共創(co-creation)、協力(cooperation) を積み上げていけたら、と考えています。

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